三角 |
「邪魔をするぞ」 「ん・・・?金子さん、何故・・?」 金子は手近な場所にどさっと腰を下ろしてポケットを探ると、早速煙草に火を付けている。 「突然訪ねてきておいてその台詞ですか。僕は貴方の馴染みの女郎でも何でも無いんですけどね」 布団の上にきちんと座りなおして、両手をつく。
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気配を感じたので要が戻ってきたのかと思い、入り口に顔を向けるとそこには意外な人物が立っていた。 「土田・・・、どうしてお前が此処に?」 身支度を整え、髪を結わえた要がその背後からひょこっと顔を覗かせ、首を傾げている。
「やれやれ、今日はお客様の多い事だ」 ―――しかし 「それにしても要、こんなに無防備にこいつを部屋に上げていて良いのか?先に言っておいてやるが、土田はお前に懸想している手合いだぞ?」 開いた口が塞がらない。 「何だ?もしかして、お前も要に悪さをした口か?」 絶対零度の闘志を孕んだ男の後ろで、にこにこと笑っている要程恐ろしい人間も居ない。
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「・・・良かったじゃないか、想いが叶って。まぁ、お前のお望みの形じゃなかったかもしれないが」 「でも意外だな。失礼ですけど、金子さんはもっと嫉妬するかと思ってました。月村先生と張り合うのはいつもの事ですけど、この間も真弓さん相手に随分派手にやり合ってたじゃないですか。」
それから何故かお前は天性のたらしだの何だのと訳のわからない難癖を金子に散々付けられるはめになった。 「誰を好きになるかは、その人の自由だから、良いんですけどね」 「試す?何をだ?」
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「なんだお前、俺は冗談だったのに、満更でもないんじゃないか」 「・・・・・」 視界の端で金子が土田の前を覗きこんで何か騒がしくしているが、知った事ではない。 享楽主義のネコ科の動物も、朴念仁のイヌ科の動物も、本当によく懐いてくれて良かった。 「でも、もうちょっと躾けが必要かな」
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